2019年出版業界再興なるか
2018年今年の漢字は「災」だった。北陸地方を襲った豪雪から、草津白根山、霧島連山新燃岳の噴火、200人以上の死者を出した西日本豪雨災害。夏の猛暑では熊谷で史上最高の41.1℃を記録。大阪では震度6強の地震が発生し、台風21号は大規模な風雨被害をもたらした。まさに自然災害の猛威にさらされた1年だった。
再編され再興が期待される出版業界
出版業界にも「災」という文字があてはまるかもしれない。
2018年1年間の紙の書籍と雑誌の推定販売金額は、1兆2,800億円台にとどまり、ピークだった平成8年の半分を割り込む見通しであることが出版科学研究所(東京)の調査で分かった。1~11月の販売実績(電子出版を除く)を基に通年の販売金額を予測したのだ。それによると出版物の販売金額は前年比6%程度減少し、14年連続の前年割れとなった。市場規模はピーク時の2兆6,564億円の半分を下回る約48%にまで縮小した。このうち雑誌(漫画の単行本含む)は前年比約10%減の5,800億円前後で、約10.8%減だった昨年に次ぐ大幅なマイナスとなる可能性が高いという。書籍は同約3%減の6,900億円前後と予測される。雑誌は21年連続、書籍は12年連続の前年割れとなる見込みだ。活字離れという言葉では片付けられない数字が続いている。
電子書籍に目を向ければ、リクルート「ポンパレeブックストア」が終了し、「eBookJapan」が全面リニューアルされ、「Yahoo!ブックストア」との統合が発表された。トーハン「Digital e-hon」のサービスが終了。ネット書店「honto」が大日本印刷本体に吸収。「マンガ図書館Z」のJコミックテラスを、メディアドゥホールディングスが子会社化。「楽天マンガ」と「コミック★まんが学園」がメディアーノへ事業売却。「ニコニコ書籍」が「BOOK☆WALKER」へ統合。「日経ストア」が2019年夏でサービス終了を発表など、サービス終了や統廃合が目立つ1年だった。
Amazonにはない日本らしいもてなしのサービスが必要か
それに対して、2018年1月にレジに人がいない無人コンビニ「Amazon GO」をアメリカでオープンさせたアメリカAmazon社。読み放題のKindle Unlimitedやプライム会員を対象としたオーナーズライブラリー、さらにKindleのコンテンツをギフトとしてプレゼントしたり、本を聞くオーディオブックなど、様々なサービスを打ち出して電子書籍のサービスでも拡大を続けている。そのAmazon社がさらに日本の出版界にインパクトを与えたのが、「あわせ買い」だろう。Amazonが展開する1回の注文金額が2000円以上にならないと購入できない「あわせ買い」サービス。その対象範囲が11月から拡大され、972円(税込み)未満の雑誌の多くが1冊だけでは買えなくなった。出版の現場では衝動買いがおさえられて販売減につながることへの懸念の声や警戒感が広がっている。その通知は〈雑誌取り扱いに関するお知らせ〉と題してAmazonから出版社へ突如通知された。そこには、『サイト上で「あわせ買い」対象となる雑誌の価格を、これまでの432円(税込み)未満から972円(税込み)未満へと変更し、平成30年11月1日から随時適用する』と明記されていたという。
既存出版流通システムの歪みや、フタ桁年数連続前年割れの出版業界、そして雨後の筍のように出現した電子書籍サービスの終了と統廃合、迷走する日本の出版界を尻目に、その出版界を手玉に取るように、膨大なユーザ情報を手に新サービスを次々と打ち出すAmazon社。両者の明暗は年月を重ねるごとに広がりを見せている。2019年日本の各サービスは、打倒Amazon社から脱却し、日本らしい顧客を第一としたサービスを展開できるか?Amazon社が展開していない近隣のアジア諸国との連携を深め、新たな市場を開拓できるか?2019年が終わる頃、業界の今年の漢字が「再」となっていることを期待したい。
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