アマゾンが狙う少数出版の作者たち
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プリントオンデマンド, 個人出版, 出版, 電子書籍
「安い」「早い」「無料」が電子書籍のイメージ?
電子書籍の市場規模については、何度かこのブログでも紹介している。
2017年度の電子書籍市場規模は、2,241億円と推計されており、2016年度と比較して13.4%増加している。また、電子雑誌市場規模は315億円と推計され、こちらは2016年と比較して4.3%増だ。電子書籍と電子雑誌を合わせた電子出版市場は2,556億円。2022年度には3,500億円程度になると予測される。
電子書籍市場規模のうち、コミックが1,845億円と市場シェアの82.3%を占めている。対して文字物(文芸・実用書・写真集等)は、396億円で市場シェアは17.7%だ。
さらに、電子書籍の利用する場合の有料と無料の割合を見ると、有料の電子書籍利用率は17.7%、無料の電子書籍のみを利用している割合は23.3%となり、無料の割合が増加傾向にある。
無料でマンガを読めるアプリやサービスが増えており、この利用者の増加が無料電子書籍の利用率拡大を後押ししているのではないだろうか。無料マンガアプリの利用率は28.4%で、2017年度の無料マンガアプリ広告市場規模は100億円となった。2018年度は120億円程度に達すると予測されている。この結果からも、電子書籍は紙より安いか、無料で読めるということで市場規模が広がっていることは明らかだ。またアマゾン社が展開するKindle Unlimitedのような、読み放題のサービスもあり、電子書籍の価格破壊、いわば本の価格破壊はしばらくは進んでいくのだろう。
個人でも電子と紙を出せる時代
それでも、まだまだ紙の本を求める読者も少なくないはずだ。
通勤・通学時間や空いた時間でさっと電子で読みたい本もあれば、紙のものを手元に置いてじっくりと読んでコレクションしたい本もあるだろう。そんな読者の要望を満たすためには、電子か紙のどちらか一方だけを販売するのでは不十分だ。
しかし、電子と紙のどちらも用意するとなると、手間とコストの問題が出てくる。特に中小の出版社となると人的リソースが割けないという声を聞く。
そんな中、アマゾンジャパンが、1冊から必要に応じて印刷・製本できる少数出版システム(プリントオンデマンド)を、千葉県市川市の配送センターに整備したというニュースが発表された。プリントんデマンドは、購入者から注文があると印刷を開始し、最短で注文当日に本が届く仕組みだ。なぜ、アマゾンジャパンがこのシステムを整備したのか?それは、個人による自費出版が国内外で増加傾向していること、さらに絶版本の復刻など、少数出版の需要が高まっているためだ。以前の自費出版と違い、現在ではリトルプレスといったちょっとオシャレな自分だけの本づくりもトレンドになっている。
様々な作品や企画を持っている出版希望者は数多く存在する。その中で大手出版社に企画を通し商業出版され、なおかつ書店に流通され長きにわたり平積みされ売れ続ける作品は、何パーセントあるだろうか。おそらく0.1%程度だろう。それよりも、電子書籍やプリントオンデマンド(オンデマンド印刷)を活用しまず作品をリリースして、SNSや各種書評サービスなどで情報を拡散し、読者の反応を見るという作者も増えている。そこで火が着いて出版社からオファーが来るといったケースも少なくない。
現状、本というとアマゾン社の独壇場となりつつあるが、それはやはり常に読者目線でサービスを考え、スピード感を持ってサービスを展開していくところが勝因となっているのだと思う。出版界においては、いま顧客側が求めていること、今後求められるだろうことを見据えながら、既存のプラットフォームをうまく活用しつつ、独自のサービスを提供していく必要に迫られている。
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