本をDIYする!ZINEが生み出すオリジナルブックの世界
自由とデザイン性を手に入れた自費出版
先日根津にある谷中ひるねこBOOKSという本屋さんに行ってきた。
ここは書店と呼ぶより“まちの本屋さん”という呼称が一番よく似合う気がする。元出版社の社員だった店主の小張隆氏が、独立して開いた本屋さん。その名の通り猫の本はもちろん、北欧の絵本や文学のほか雑貨なども揃えている。実に個性的な本屋さんで、入口を開くとワクワクする。最近はそんな個人の本屋さんが増えてきている。僕もよくお邪魔しているが、本当に宝箱のように各所にワクワクする仕掛けがされている。といっても、何か飛び出してくる訳ではない。店主の好きな本に対する愛情が随所に感じられるのだ。同じ趣味嗜好を持っているならば、これほど幸せな空間はないだろう。
今回は絵本をづくりを企画しているクライアントさんに、絵本の仕上がりイメージを広げてもらうため、ここにお連れした。急な相談であったが、店主の小張氏はこれまでの経験や知識を使って、素晴らしいアドバイスをしてくれた。さらに選択肢が増えて悩んでしまうことになったかもしれないが(笑)。しかし著者や制作者にとって、こういったアドバイスをもらい、イメージを広げ、自分にあった制作方法や売り方、予算のかけ方を考えるというのはとても大切なことだ。
この時教えてもらったのは、「ZINE(ジン)」
「リトルプレス」とも呼ばれている。ZINEは個人が自由なテーマで作る小冊子だ。50ページ以下のものもあれば、それ以上のものもある。小冊子でありミニ本といったところか。元々は、MagazineやFanzine(同人誌)の「ZINE」が名前の由来で、体系はいわゆる「自費出版」だ。しかし、そのデザインや内容を見る限り、数十年前の同人誌とはちょっと毛色が違う。写真やイラスト、小説などその内容は様々で、新たな情報発信ツールとして今広がりを見せている。ZINEで有名なところと言えば「 MOUNT ZINE Shop」がある。書籍や雑誌はそのサイズや形がほぼ決まっていて、画一的なものだが、ZINEは一般的な書籍や雑誌のようにフォーマットが決まっておらず、アーティストや作家の個性が発揮できるのがポイントだ。自費出版といっても、かなりクオリティが高く面白い作品が多い。僕がひるねこさんで買ったZINEも、それはそれはデザイン性の高い作品だった。
出版、販売、そして発信のカタチが大きく変わる
自費出版というと、文字通り著者が自分で費用を出して出版することで、商業出版のように流通ルートや販売部数を確保するのが困難ではあるものの、自由にコンテンツを出版することができるのが特長である。これまでだと、趣味で書いた小説や絵本、詩や絵画などの作品集、自分史や社史などの出版に利用されてきた。同人誌などもその一つだろう。日本の出版物は、基本的に取次を通して書店で販売される商業出版物が主流で、自費出版は市場での販売による収益が期待できないものだった。そのため、大手出版社では取り扱ってもらえず、印刷会社などが請け負うことが多かった。
2000年以降には、書店と直接契約するなどで「書店販売を行う」ことをセールスポイントにした「共同出版型」や、大手新聞などで出版賞募集をPRし入賞作品を自費出版に誘導する「出版賞型」の手法も登場した。いまやAmazon社が、kindle Direct Publishing(KDP)のサービスがスタートし、個人で出版し結構な部数を売り上げるユーザもいる。 従来の自費出版とは様相が随分と変わってきている。また、電子書籍も組み合わせることで、さらに発信する世界が広がり、言語を変えれば世界中に作品を発信し見てもらうこともできる。もちろん、ZINEはその版型の面白さやデザイン性を売りにしているものも多いので、電子でそのあたりが伝えられないのは残念だが。
それにしても、ここにきて出版のカタチは大きな変化を見せている。いわゆる“プロ”に頼まなくても、出版し発信し販売することが出来るのだ。そしてSNSなどを使って、自分自身でファンを集めることも可能だ。
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