教育格差の未来を考える
違いとやり直しを認めるデンマーク
北欧諸国は毎回教育に関するランキングで上位を独占する。
最近メディアでよく見るのは、幸福度ランキングなるもの。こちらも北欧諸国が必ず上位に挙がる。幸せの基準は様々な物差しで測られるが、北欧諸国の人々の意見を聞くと、概して心が豊かであることを強調している。お金よりも、仕事よりも家族や親しい人との時間を優先する。もちろん仕事を疎かにしているわけではない。豊かな時間を過ごすために、効率化と生産性を向上させる努力を惜しまない。残業や時間外労働がフツーになっている日本とは、根本的な考え方が違うと思う。
そんな北欧諸国は、教育制度も日本とは大きく異なる。特に学費については大学卒業まで無料で、受験戦争のようなものもない。日本とは国民の人数の違いはあれど、国民が国の最重要な財産と位置づけ、制度をつくり施策を行ってきたというのは大きい。戦後日本でなされた来た教育制度や施策とは、真逆を行っている。
例えばデンマークでは、小中学校が9年間、その後高校へ3年間通う。デンマークには入学試験がないため、受験勉強をする必要もない。そのため日本の学習塾のようなものも存在しない。当然勉強が出来ない子どもも出てくるが、その場合は「自分が得意な分野を探して、専門学校へ行くことになる。そしてもしそこが合わなかったらまた違う学校へ行き直すという。何度でもやり直しができる、そういうことが国民の間で認められているというのが、日本との大きな相違点であると思う。
デンマークには「フォルケホイスコーレ(folkehøjskole)」というとてもユニークな学校がある。フォルケホイスコーレは、成人の教育機関、生涯の教育機関とでも言おうか、通常の公教育から独立していて影響を受けない私立学校のことである。入学資格は原則として17歳半以上であり、入学試験はない。在学中も「試験」と名のつくものは基本的にはない。成績表もなければ、卒業証書といったものもない。自然の中の寄宿学校で、クラスメイトと教師が寝食を共にする。
他との違いを認め、自分の道を進んだり戻ったりしながら、本当に合ったところを見つけ出すことが許されているわけだ。こういった国の在り方も心の豊かさに繋がっているのでは?と思ってしまう。
ただ、この教育制度も変わりつつあるようで、社会の高齢化や移民増加の影響により、教育費が国の財政を逼迫させているという。世界一教育にお金をかけているデンマークはその予算を削減する一環として、2017年1月から大学の学部生は、何度もやり直しを認めなくなったとのことだ。
崩壊に向かった日本の教育制度
翻って日本の話。教育制度や方針、施策などをここで語るつもりはない。
昨日、衆議院議員会館で開催された「教育格差の現実とステップアップ塾の事例紹介」というフォーラムに参加してきた。ステップアップ塾については、以前のブログでも書いているので、そちらを参照して頂きたい。
学習環境の多様化と電子書籍の活用
http://www.g-rexjapan.co.jp/omoikaneproject/2018/02/04/post-2727/
簡単に説明すると、家庭環境などにより塾に行くことが難しい、教育の機会が損失してしまっている子どもたちの学習支援を行い、教育格差を是正を目指して小・中学生を対象に設立された無料塾である。因みにステップアップ塾では、学習指導の他に給食の提供、課外授業、ココロのメンテナンス(メンタルケア)も行なっている。
今回のフォーラムでは、教育に関係する様々なパネリストも登壇し、日本が抱えていながらもあまり表立って出てこない教育格差、教育機会の格差について話し合われた。
経済的事情で学習塾に通えない子どもたちは、学校での授業や宿題が学びの機会であり、非常に重要なものになる。しかしながら、塾に通える子どもたちが多くいる学級では、授業が疎んじられ、塾が忙しいから宿題を出すなと言う家庭もあるという。さらには、多くのふ学校で学級崩壊が進み、授業にならないケースが数多あるそうだ。そうなれば、塾に行けない子どもたちはどうやって学べばいいのか。前述したデンマークのような特別な学校も存在しない。フリースクールなどはあるが、なんとかボランティアで賄われている状況だ。
そういった日本の小・中学生の学びの状況を憂い、自身の幼少時からの家庭におけるDVの経験などから、ステップアップ塾の塾長である濱松氏は現在の塾を開いた。本来であれば、国が子ども達の置かれている状況に目を向け、セーフティーネットとなる仕組みや組織を作り、学びの環境だけは確保したり、やり直しがきくような環境や風潮を整えていくことが肝要であろう。しかしながら、現場任せにされた学校は、今まったく逆の方向に転がり落ちていっている気がしてならない。
国の未来を担う宝である子どもたちのために、やらなければいけない!と立ち上がった人間がやるしかない状況がいつまで続くのだろう。幸福度ランキングというもので、日本が上位にランクインするのはいつになるのだろうか。
ステップアップ塾
https://stepup-unesco.com
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