看護・介護分野での電子化
僕は今所属しているジーレックスジャパン株式会社で働く前は、介護福祉士として訪問入浴や介護予防のアクティビティに携わっていました。高齢者介護の分野では、個人の状態やサービス利用に関する情報の保存は、当時まだまだ手書きによるものがほとんどで、紙によるデータの保管が主流でした。当然その量は膨大なものとなり、事務用キャビネットがいくつあっても足りないくらいでした。そういった記録は、少なくとも5年は残しておく必要がありましたからね。監査など入ろうものなら2、3日は徹夜で帳票をまとめていました(笑)
そういった帳票については、介護だけでなく看護も同じ。当時僕が所属していた会社は、元々医療事務の資格取得講座や、派遣業務をメインで行っており、現在でも収益の割合でいったらそこが一番の稼ぎどころのようです。クリニックや病院のレセプトと呼ばれる、謂わば診療報酬請求書・明細書は、早い段階から電子化が行われており、集積・分析が進められてきました。しかしながら、介護保険における訪問看護については遅れている状況なんですね。
看護・介護の場面でも電子化が求められている
日本看護協会(日看協)は2018年4月9日、厚生労働省保険局に宛てて、「訪問看護ステーションの報酬請求事務効率化を図るため、早期に訪問看護療養費の診療報酬請求の電子化を開始してほしい。」という要望を出しました。診療報酬請求書・明細書については、電子化(電子レセプト)が進められており、請求事務の効率化やレセプトデータの集積・分析が進められています。この点、訪問看護については医療保険では紙レセプト、介護保険では電子レセプトというやや遅れた状況だというのです。
日看協は「医療保険の訪問看護療養費の請求件数は年間250万件超で、紙レセプトによる請求事務が大きな負担である。訪問看護ステーションの請求事務効率化を図る必要がある」とし、早期に訪問看護療養費(医療保険)の診療報酬請求の電子化を開始してほしいと強く要望しました。そして2019年度予算での対応を求めています。それとあわせて、診療報酬改定論議を行う中央社会保険医療協議会について、「看護職を診療側委員」として認定することも求めています。
管理部分での効率化が現場でのホスピタリティにつながる
以前、歯科医師会の方から、診療報酬改訂における資料を簡単に修正できるように電子化できないか?という相談を受けたことがあります。介護サービスの報酬もそうですが、報酬改訂において変わる部分って、本当に一部だったりするんですよね。その度に紙版の資料を全修正し、プリントアウトして確認する必要がある。そしてそれを製本印刷しなくてはいけない。これって、ものすごく時間と手間がもったいない。もちろん紙で必要だとは思うけど、電子版をメインにして必要なら紙版を出すということになれば、大幅なコスト削減になると思うのです。また効率化が図れた分、現場で患者さんや利用者さんに費やす時間が作れると思います。
電子書籍はまだ手を出していない、なんでも電子化されるのはどうかと思う、そんな意見があってもいいと思います。スマートフォン(iPhone)が日本で販売されてから、多くの人が持つようになるまで約5年がかかったといいます。日本における紙から電子の波はまだまだこれからからもしれませんが、近い将来間違いなく全てが電子化していくでしょう。その時を見込んで、今から電子化を進めていくことがサービスを利用するユーザのためになると、僕は信じています。
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