電子化で変わる自費出版のあり方
個人が自由なテーマで作る「ZINE(ジン)」という小冊子が人気だそう。MagazineやFanzine(同人誌)の「ZINE」が名前の由来で、体系はいわゆる「自費出版」です。写真やイラスト、小説などその内容は様々で、新たな情報発信ツールとして広がりを見せている。ZINEのお店 MOUNT ZINE Shopを運営する、代表の櫻井史樹さん曰く「セルフパブリッシングを『誰もがやっていること』へする」というのがコンセプトとのこと。(https://www.70seeds.jp/mountzine304/)書籍や雑誌はそのサイズや形はほぼ決まっていて、画一的なものであるが、ZINEは一般的な書籍や雑誌のようにフォーマットが決まっておらず、アーティストや作家の個性が発揮できる。こういった自費出版の新しい形が出て来ることは、とても興味深いですね。
■新しい形を見せる自費出版
自費出版というと、文字通り著者が自分で費用を出して出版することで、商業出版のように流通ルートや販売部数を確保するのが困難ではあるものの、自由にコンテンツを出版することができるのが特長ですね。これまでだと、趣味で書いた小説や絵本、詩や絵画などの作品集、自分史や社史などの出版に利用されてきました。もともと出版物は、出版取次を通して書店で販売される商業出版物が主流で、自費出版は市場での販売による収益が期待できないものでした。そのため、出版社では取り扱ってもらえず、印刷会社などが請け負う形が一般的でした。
2000年以降には、書店と直接契約するなどで「書店販売を行う」ことをセールスポイントにした「共同出版型」の形や、大手新聞などで出版賞募集をPRし入賞作品を自費出版に誘導する「出版賞型」の手法が登場しました。また、米Amazon社が、kindle Direct Publishing(KDP)のサービスがスタートしてからは、個人で出版し結構な部数を売り上げるユーザも出て来ています。 従来の自費出版は「出版費用が高い」「出版社との交渉が必要」などといったことから、出版のハードルが高かったのですが、電子書籍とKDPの出現により「初期手数料が無料」「出版社を通さない」という、著者にとって出版が身近なものとなり、ある程度の知識があれば誰でも出版が可能になりました。その意味で、電子書籍は出版の世界を大きく変えたといえるでしょうね。
■電子書籍が変える自費出版
それでも、商業出版と自費出版はまったく別物で、やはり出版社を通した商業出版の方が、地位が高いと考える風潮はあります。もちろん、百戦錬磨の出版社の編集者が、これは売れる!と考えて、広告戦略を立てて売り出す本は、自費出版のそれとは比較にならないほどに人目につくと思います。ただ、そのようにして「売れる」と判断されず、出版社からの出版を諦めた作品の中にも、爆発的なセールスにはならないとしても、長くじっくり売れていくものもあるのではないかと思います。僕はそういった作品を世に発信し、ロングテール的に購入者を募っていきたいと思うんですね。
電子書籍は「モノ」がないから、、、という声もよく耳にしますが、いまやプリントオンデマンドで、ある程度の品質の本を廉価で作ることも出来ますよね。amazon社や楽天、三省堂なども行っています。電子で出版して、売れたら紙にするという流れも十分に考えられるようになったと思います。前出の「ZINE」のように、出版という行為が個人レベルで行われるようになり、SNSを使って拡散・販売する時代は、もう来てしまいました。紙と電子を使い分けながら、たくさんの著者候補のみなさんが出版し、世界レベルで想いやノウハウ、アイデアの交換がなされることを期待したいですね。僕はその手伝いをしていきたいと思います。
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