出版不況と出版社倒産 その時著者の作品はどうなるのか?
信用調査会社の東京商工リサーチによると、東京都新宿区に本拠を置く出版社の「株式会社三五館」は、10月5日付で事業を停止し、事後処理を弁護士に一任したことが明らかになりました。
三五館といえば、ノンフィクション雑誌や書籍等をメインにした出版会社で、宗教、ビジネス関連、健康関連の書籍出版を行なっていました。ピークとなった平成27年3月期には、売上高約3億2000万円をあげていたようですね。それが、近年の売上伸び悩みから業績悪化が続き、29年3月期の売上高は約2億5000万円に減少。これ以上の事業継続は困難と判断し今回の措置に至ったとのこと。負債総額は約3億円の見通し。設立は平成4年で、老舗ではないものの、一時期は3億を売り上げていた会社が、2年後に倒産するというのは、いまの出版不況時代を表していると思います。
■出版不況の要因は構造と体制?■
実はこの三五館のほかにも、草思社、育文社といった出版社の破産が相次いでいます。出版業界は、1990年代末をピークに20年近く縮小してきており、出版不況と言われて久しいですが、この間にも多くの出版社が倒産していきました。スマホアプリによる活字離れや、電子書籍の台頭など、要因は色々言われていますが、やはり大きいのは業界の流通構造と体制なのではないかと思います。
再販制度はこのブログでも何度も書いているし、ネットに山ほど出ているので割愛しますが、あの流通構造をまず考え直す必要があるかと思いますね。取次優位な状況で、その取次は2社が70%のシェアを占めている。異様な感じです。再販制度のおかげで、書店は売れ残りのリスクを考えずに、気楽にさまざまな分野の本を仕入れることができるというメリットがあるわけですが、返品される出版社としてはたまったものではないでしょう。一般に書店から出版社への返品率は4割程度発生すると言われています。出版社は、1000部の本を作っても、400部が返品で戻ってきてしまう。これには、とある中小出版社の社長さんも嘆いていました。再販制度や、出版社と取次と書店の関係性は、なかなか変えられるものではないかもしれないですが、何か手立てを講じないと、出版社の倒産は止まらないでしょう。
■既刊本は完全に眠らされてしまうのか■
そして問題は、倒産してしまった出版社の出版物がどうなるかですね。
出版社が倒産した場合、版権を一部引き継いで、別の出版社が販売を続けていくという作品もあるかと思いますが、殆どの作品は絶版になるのではないでしょうか。 そういった作品の中には、大量に売れるわけではなくても、読者に求められるものがたくさんあるはずです。そういった作品が絶版になり、読者が目にすることもできなくなってしまうというのは、あまりに勿体無いと思うのです。著者にとっては、自分の一部を切り取ったある意味分身のような作品が、完全に眠らされてしまうというのは、痛恨の極みではないでしょうか。
そういった作品こそ、電子化で生まれ変わらせて、いつでも読者が手に取れるようにしておくべきだと、僕は思います。
電子書籍になっても、紙の状態で欲しければオンデマンド印刷もありますし、売れ行き好調!ということになれば、製本だってできる。でも、絶版でもう在庫もありませんとなったら、作品は完全に葬られてしまいます。(古本屋にはあるかもしれないですが)
先日、とある著者の方とご縁をいただき、過去の既刊本について電子化を進めるお話になりました。その著書を出している出版社に問い合わせしたところ、「自分たちがやるので関わらないで欲しい」と言われました。その作品は結構以前に絶版となっており、その後は何もされていなかったようですが、いざ外から電子化の話となると、やはりイニシアティブを取りたくなるものなんですね。おそらく電子配信の契約はされていないのではないかと思いますが。まあ、版権は継続しているみたいですがね。
出版不況は、色々な理由で今後も続いていくでしょう。その中で大手出版社も厳しい状況に陥るかもしれません。となれば、中小の出版社は尚更。だから全部電子化しておいてとは言いませんが、作品が見られなくなるようなことだけは避けて欲しいと思います。著者の絶望、読者の落胆を生まないように、早めの対策をしておきたいものです。
過去の体制や施策に固執することなく、新しい仕組みを試して頂きたいですね。
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