出版社の本の電子化を考える
このところ、出版社をまわって様々な話を聞かせてもらっています。
その中で本の電子化ついても意見を伺うことが増えました。
出版社に電子書籍の話を持ちかけると、明からさまに反意を唱える人、考えてはいるがすぐには動かないと言う人、そしてすでに電子化は進めているが売れないという3つのタイプに別れます。
一つ目の「反意を唱える人」というのは、例えば絵本や児童書を作っている出版社。これはその作品の性質上、子どもに紙の「本」というものを知ってもらい、触れてもらいたいということがあるので、分からないでもないですね。「本」というのは、紙で出来ていて、そこに文字や絵が書かれていて、ページをめくりながらお話の展開にワクワク、ドキドキする。そういう知識の習得や体験は大事ですからね。いずれ近いうちに、端末で電子絵本を見るという方向にシフトし、電子のシェアも拡大するとは思いますが。
二つ目の「考えているがすぐには動かない」と言う人は、様子見の場合がほとんど。業界内のつながりで、電子化したけど売れない、amazonのkindleでは売れるけど、ロイヤリティが、、、といった情報を受けて、二の足を踏んでいるといったところ。市場の8割が漫画・コミックということで、漫画・コミックを扱っている会社は、積極的に電子化やアプリ化を進めていますね。逆に専門書や学術系の本については、内容の転載の問題などもあり、電子化が進められないという事情もあります。
そして三つ目の「すでに電子化は進めているが売れない」という人。売れるというのがどのくらいの数字を基準にしているかによりますが、割と聞くのが紙の1/10程度の売れ行きという声。もちろん電子出版している規模にもよりますが、概ねそのくらいの売れ行きでしょうか。市場は拡大しているとはいえ、紙の市場と比べるとまだまだ日常的に電子書籍を使っている人は多くはないですから、紙と同じようにはいかないでしょう。
ベストセラーという言葉をよく聞きますが、そもそもベストセラーはどのくらい売ればベストセラーなのか?Wikipediaでは、「ある特定の期間内に驚異的な売上を記録した物のこと」とある。また「他の本との相対的な比較の話である。何冊以上とか何か月以内とか、絶対的な基準で決めているわけではない。分野によってベストセラーの基準は異なり、市場規模と連動してその線引きは異なっている。例えば児童書の場合は、2万部でベストセラーとされることがある。児童書はそれだけ概して販売数が小さいのである。」ということで、特に何冊売れたらという明確な定義はないわけです。
なので出版社としては、収益がどの程度見込めるかが大事で、在庫の無い電子書籍では、紙ほどの売り上げがなくても、赤字になるということは少ないのではないでしょうか。
それよりも重要なのは、読者層を拡大するということではないかと思います。
電子書籍にすることで、紙では流通させることの出来なかった国内の地域や(取次の輸送の問題など)、販売することが難しかった海外への配信も見込めるようになります。もちろんそれには翻訳が必要になりますが。また、SNSでの発信や連携によって、これまでアプローチ出来なかった年齢層の目にも留まることもあるし、シェアにより思わぬ広がりをみせることがあります。
さらにいえば、新刊の出版はさることながら過去の作品を電子化し、再度プロモーションすることで、一旦市場に出たものの重版されることなく絶版となってしまった作品が、売り上げを運んでくる可能性も出てきます。初版当時には興味を持っていなかった層が、数年経過することでターゲットになっていることもあるでしょう。
取次や書店との関係で、どんどん売れそうな新刊を出し、ベストセラーを狙っていくことが求められる出版業界で、紙と電子を使ってロングセラーを狙っていくことも必要ではないかと思います。出版不況と言われて久しい出版業界ですが、脈々と続く既存のシステムがその要因の一つとなっていることも否めません。
出版社の皆さんには、新しい仕組みや環境で、販売先や販売ターゲット、そして販売方法を考えてみてほしいと思います。
僕たちはその一翼を担えると考えています。
著者の皆さんから、電子化の依頼が届いています!
http://www.g-rexjapan.co.jp/omoikaneproject/computerization/
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