音楽が導く世界の相互理解
■歌い継がれる人類の財産■
僕は小学生の頃、少しだけ詩吟を習っていました。
祖父母が詩吟の師範で、毎週末地域のコミュニティーセンターで詩吟の会が行われていて、それにくっついて行くうちに、口ずさむようになりました。そんな僕を見ていた祖父が、ちょっとお前もやってみろと言われ、見よう見まねでやってみると、周囲の大人たちにもてはやされ(お世辞だろうけど、、、)本気で続けるようになったんです。
もともと詩吟は、江戸時代後期に武家の子弟を教育した私塾や藩校で、漢詩を素読するときに独特の節を付けて詠んだことから始まったと言われています。当時の僕は「少年老い易く学成り難し〜」で有名な「偶成」を十八番にしていました。素読の後に特有のメロディである「節調」をつけるのがとても面白くて、お風呂でいつも練習していました。あれからもう30年、まさに「一寸の光陰軽んずべからず」ですね。
もうひとつ、祖母が趣味で唄っていたのが「日本の民謡」
こっちは特に師範ということではなく、完全に祖母の趣味でした。有名な黒田節、炭坑節、草津節から、地元茨城に伝わる磯原節、筑波山唄などを唄っていました。僕は祖母が唄う民謡が好きで、よく一緒に口ずさんだものでした。それとたまに聞かせてくれる手毬歌に合わせて、サッカーのリフティングをしていたのを覚えています。
詩吟も民謡も、長い時間をかけて、人々が代々歌い継いできたもので、とても貴重な財産だと思います。今でも唱歌やわらべ歌などは、学校で唄うこともあるでしょうけど、詩吟や民謡となるとなかなか教わることもないですよね。日本に限らず、世界にも各国、各地域に伝わる民謡があります。そこには、国や地域ならではの暮らしぶりや、文化・慣習などが詠み込まれていて、民謡を知ることで、その国人々の特徴も垣間見れたりします。
■民謡は世界に平和をもたらすか■
女優さんであり、社会音楽家として活動する緒方美穂さん。
彼女がリーダーを務めるバンド「ORINOVIVO」は、尺八、ヴァイオリン、ギター、ダブルパーカッションという珍しい構成で、世界の民謡を奏でます。世界の民謡というと、あまり馴染みがなさそうなイメージですが、実は日本でも唄ったりメディアで利用されたりしているんですね。有名なところでは、大手賃貸物件会社のCMで使われている、フィンランドの「Ievan Polkka(イエヴァン・ポルカ)」や、日本では「鬼のパンツ」として歌われている、イタリアの「フニクリ・フニクラ」など、結構耳に馴染んだものが多いです。
そんな世界の民謡をアレンジして、よりみんなが楽しめるようなものにして、日本の学校や図書館へ教材として広めていこうとしているのが、緒方美穂さんのプロジェクトです。緒方さんは、ORINOVIVOで世界の民謡を奏でる際、その国の成り立ちや歴史、文化などのバックボーンを調べあげるそうです。そうすると、今まで知らなかった国のことを深く知ることができ、日本との関係や、実は〇〇だったなどという新事実も明らかになり、その国の人々と分かり合える気がするとのこと。
そうなんですよね。戦争や紛争が起こる理由はいろいろあるけど、お互いを理解出来ていないというのも大きな原因になっていると思います。だからこそ、相互理解が必要。緒方さんはそのコミュニケーションツールとして、音楽=民謡を使おうと考えています。
■電子書籍を使って、知ろう、唄おう■
音楽の時間に世界の民謡を唄いながら、様々な国の歴史や文化を知り、まだ見ぬ国の人々に思いを馳せる。そんな授業や活動が出来たら面白そうですね。僕たちは、この緒方さんのプロジェクトに電子書籍で関わっていきます。CDとマニュアル本の形で導入するのもいいと思いますが、いまや授業でもiPadを使っていますからね。僕の娘が通う小学校は、6年生1クラス17名という過疎地域の学校です。そんな学校でもiPadとプロジェクタを使った授業をしています。いや、むしろ過疎地域だからこそ、タブレットやネットを駆使した授業を推進するべきだと思いますね。極端な話、ネット環境と端末さえあれば、紙の教材も先生もいらなくなってしまうかもしれませんよね?
今回の緒方さんのプロジェクトも、電子書籍の仕組みを使ったオーディオブック化することで、全国全世界の学校に送り込むことができます。あとは、安価で導入できる端末の開発が進めば、劇的に授業環境が変わるのではないでしょうか。僕は、教育と電子書籍は非常に相性がいいと思っています。紙は紙の、電子は電子の有効な使い方を考えて上手に棲み分けることで、相乗効果が見込めそうですね。
電子書籍が世界の相互理解を推進し、過疎地域の教育環境改善にも役立つ。実に面白いプロジェクトになりそうです。
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