日本の電子出版を後押しするEPUB3
前回はそもそも電子書籍のEPUBってどんなものなのか?を特徴を混じえて書きました。今日はそのEPUBが日本語のサポートを強化しているという話。日本語で、縦書きで、そして世界に向けて本を出したいと思っている皆さん、チャンスです。
HTML5とCSSとZIPで構成されるEPUBは、動画や音声の埋め込みはもちろん、Javascriptを入れた動的なコンテンツを作ることも可能です。当然インタラクティブなコンテンツもありでしょうね。あ、でも、後述するように閲覧環境によるので注意が必要です。
さらに、日本人としては嬉しい機能がEPUB3.0.1からサポートされています。
それまでの2.0.1では…
・縦組みを指定することができない
・縦中横ができない
→縦書きで、全角文字1文字分のスペースに横にした文字を配置すること。日付などの表記でよく使われますね。
・圏点が指定できない
→文章中の文字のわきに付けるあの小さな点ですね → こういうの「・」「◦」「、」
・割注を指定できない
→本文1行分の空間内に小さな文字で2行で注釈を組み込むことです。
・漢文の返り点を指定できない
→これは、漢文ですね。
といった問題がありましたが、EPUB3.0.1でこれらの問題が解消されました。それがどうしたの?っておっしゃるみなさん、実際に縦書きで本を書いてみるとお分りいただけますよ。意外とこれ使えます。さらにEPUB 3.0.1では日本語だけではなく台湾や香港の縦書き、右から左へ書くアラビア語およびヘブライ語にも対応しています。広がってますね〜。
それともう一つの特徴として、固定型EPUBの扱いが変わった点。前回、マンガや雑誌は特殊なレイアウトを持っているので固定型が向いていると書きましたが、EPUB3.0.1では、固定型EPUBも仕様の中に正式に含めていて、固定型とリフロー型が混在したデータでも、仕様上は正しいと認識されるようになりました。
特徴ある日本語をサポートし始めたEPUB3、HTML5とCSSの組み合わせで表現の可能性が高くなったけど、複雑なレイアウトはまだまだ難しいといえます。これは閲覧するリーダーアプリにも拠ってしまうので、同じデータでもリーダーで見え方が違ってしまう可能性もあるのです。なので、前述の固定型+リフロー型のデータなども、実際に閲覧可能かどうかは実機チェックが必須ですね。
とはいえ、これによって日本で出版される各種コンテンツのEPUB3への移行が進み、閲覧できる書籍データが増え、制作・閲覧アプリケーション技術の標準化、進化が進んでいることは間違いありません。
これって出版のチャンスがどんどん広がっているってことじゃないですか。
日本国内のみならず、台湾や香港、アラビア語やヘブライ語もサポートするEPUB3が標準化されることで、同じアプリケーションで多言語データを制作し、閲覧できるということでしょ(まあ、色々手は加える必要がありますが)。これまで紙の本を出版するのにどれだけの手間と時間とお金がかかったか。それでも出版できないケースの方が多いわけで。
売れるか売れないか?そんなことを考えるより、書籍として自分の想いや考え、知識をまとめて世界へ発信できるってことがどれだけ凄いことかを考えた方がいいですよね。どこかの書店でランキング1位になるのもいいけど、SNSを使って本を書いていることを広めましょうよ。どんな想いでどんな人に向けて、何を伝えようとしているのか、それをSNSに乗せて発信した方がみんな買ってくれるんじゃないかと思うんです。
出版〜発信〜販売までの流れが、EPUBの登場で劇的に変わっています。今が本を書く絶好のチャンスです。
みなさんも本を書いて世界へ発信してみませんか?
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